塗工・乾燥プロセス技術の基礎とノウハウ
~各種塗工方式・乾燥・塗工液・スケールアップ・トラブル対策~
| 著者 | 浜本 伸夫 AndanTEC 代表
[経歴] 1992年 北海道大学 工学部 合成化学工学専攻 修士修了 同年 富士写真フィルム 塗工を中心としたフィルム生産工程業務に従事 2007年 同 社 フラットパネル生産部 主任技師(管理職) 2013年 サムスン電子 総合技術院 素材開発センター 主席研究員 新素材開発に従事 2019年 栗村化学 工程開発チーム長 粘着フィルム・離型フィルム等の工程開発 2021年 米国 Zymergen社 シニアマネージャー バイオ由来ポリイミド開発 2022年 ミドリ安全 商品開発部 ジェネラルマネージャー ニトリルゴム手袋開発 2023年 AndanTECとして執筆・講演・コンサル業に専念 2026年 Roll To Roll研究会(Japan Roll To Roll Asociation)を設立、代表に就任 [専門] 塗工/Roll To Roll製造/クリーンルーム/静電気 |
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| 発刊日 | 2026年5月20日 |
| 体裁 | B5判並製本 190頁(予定) |
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価格(税込)
各種割引特典
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55,000円
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送料は当社負担 アカデミー割引価格 38,500円(35,000円+税) |
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| ISBNコード | 978-4-86428-337-3 |
| Cコード | C3058 |
概要
塗工に関する論文は学術理論が中心で、現場の情報は経験的ノウハウに偏りがちです。本書ではその間を埋めることを意識し、塗工プロセスを現象理解の視点から整理しています。
●Roll to Roll塗工・乾燥プロセスを体系的に理解
開発から製造までのRoll to Roll塗工・乾燥プロセスを対象に、塗工・乾燥・界面現象など、塗工品質に関わる要素を横断的に整理しています。
●主要な塗工方式の原理と特徴を解説
スロット塗工を中心に、ブレード、グラビア、バー、ディップ、スピン塗工、メニスカス塗布など、代表的な塗工方式の原理と特徴を整理しています。
●塗工品質トラブルを理解するためのプロセス知識
表面張力や粘性といった塗工液の基礎物性に加え、異物対策やクリーンルーム設計など、製造現場で品質に影響する要素を解説しています。
● 機能性フィルム、電池材料、電子材料などのRoll to Roll製品の製造技術者の方
● 塗工・乾燥工程のトラブル原因を理解し、対策したい生産技術者の方
● 塗工プロセスを体系的に理解したい研究者・開発者の方
● 塗工技術を理論と現場の両面から学びたい初学者〜経験者の方
第1章 Roll To Roll塗工方式の分類
Roll To Roll塗工の基本概念と各種塗工方式の位置づけを整理。フィルム用途と塗膜構造の関係を概観し、粘度・Wet厚みによる塗工方式の適用範囲、前計量・後計量の違い、動的/静的接触点によるダイ塗工の分類などを通じて、塗工プロセス全体を俯瞰する基礎知識を解説します。
第2章 スロット塗工
スロット塗工の流動原理と装置設計を解説。ビード形成、背面減圧、Bite調整などの操作条件と安定塗工の成立条件を整理し、非ニュートン粘性を踏まえたダイ内部流動や幅方向分布への影響を説明。LIB電極の両面塗工や間欠塗工、設備振動対策など量産工程での品質向上のポイントも理解できます。
第3章 ブレード塗工(ナイフ塗工)
ブレード塗工の基本原理とコンマコーターの流動挙動を解説。Couette流と潤滑流動モデルによる膜厚見積もりを示し、コンマコーター特有の流動特性を整理します。さらにロール変形対策や液溜め設計、泡混入防止など、厚膜塗工を安定させるための装置設計と運用ポイントを紹介します。
第4章 グラビア塗工
薄層塗工で広く用いられるグラビア塗工の原理を整理。フォワード/リバース方式やマイクログラビア、ドクターチャンバーなど装置構成を解説し、セル形状や濡れ性、速度比が転写率や塗膜厚に与える影響を説明。リブやカスケードなど欠陥発生メカニズムと対策も理解できます。
第5章 バー塗工
極薄膜塗工に適したバー塗工の原理と実務設計を解説。ワイヤーバーや溝付きバーの構造、塗工量を決める幾何学関係、Orchard式によるレベリング理論を整理します。さらにリブや段ムラなど欠陥の発生要因と、芯金径や駆動系など装置設計による回避策も理解できます。
第6章 ディップ塗工
ディップ塗工の膜形成原理と膜厚制御の考え方を整理。引き上げ速度によって毛管駆動による薄膜形成と、重力・粘性バランスによる厚膜形成に分かれることを説明します。定常膜厚理論や非定常塗工で生じる膜厚分布の要因、研究用途での活用方法も理解できます。
第7章 スピン塗工
遠心力による液膜拡散と乾燥による膜固定から成るスピン塗工の膜形成プロセスを解説。回転数・粘度・時間などが膜厚に与える影響や乾燥条件の役割を整理し、ペロブスカイト太陽電池の事例を通じて、実験室結果をRoll To Roll量産へスケールアップする際の課題を理解できます。
第8章 メニスカス塗布(キャピラリーコート法)
メニスカス柱を利用して薄膜を形成する塗工方式の原理を解説。スロット塗工に似た構造を持ちながら膜厚がメニスカス状態に依存する後計量型塗工である特徴や、低速塗工・揮発成膜の特性を整理します。ペロブスカイト太陽電池量産技術への応用動向も紹介します。
第9章 乾燥
乾燥工程で温度・風速・溶媒濃度が乾燥速度と膜温を決める仕組みを解説。ノズル形状や炉内気流が乾燥能力や膜ムラに与える影響、定率乾燥から減率乾燥への移行、分散塗膜で起こる偏析や沈降の要因などを整理し、乾燥条件設計の考え方を理解できます。
第10章 表面張力
水系塗工で発生するはじきや塗りムラの原因となる表面張力の役割を解説。静的表面張力と動的表面張力の違い、界面活性剤の拡散・配向、CMCと添加量の関係を整理し、動的表面張力の測定法やマランゴニ効果による膜欠陥の発生メカニズムを理解できます。
第11章 基材の濡れ性
接触角と表面エネルギーの観点から基材の濡れ性を解説。Youngの関係に加え、表面粗さが濡れ性に与える影響をWenzel理論やCassie理論で整理します。さらにコロナ・プラズマ・UV処理などの表面改質と経時変化を説明し、塗工性改善の基本を理解できます。
第12章 塗工液の濃度と粘度
塗工液の濃度と粘度を支配する物理要因を整理。微粒子分散系の増粘機構や高分子溶液の絡み合いによる粘度上昇を説明し、非ニュートン性や温度依存性の特徴を解説します。塗工液配合設計や乾燥工程での粘度変化を理解するための基礎を学べます。
第13章 Roll To Roll工程のクリーン化
精密塗工製品で問題となる異物欠陥を防ぐための工程クリーン化を解説。クリーンルームの清浄度や換気回数、HEPA/ULPAフィルターの役割と気流設計を整理し、塗工室のクリーン化と風ムラのトレードオフを説明。フィルム帯電と除電対策の基本も理解できます。
第14章 Roll To Roll解析ツール
塗工現象を理解するだけでなく、実際の工程条件を簡易的に計算・検討するための解析ツールを紹介。
書籍趣旨
機能性フィルムの開発や製造の課題を遂行する際、欠陥やトラブルに悩まされることが多いであろう。筆者自身、生産技術の研究部門で塗工理論を学んだ後に、 製造部門の技術者として、生産性や品質向上に従事したが、塗工に関する論文は学術的すぎで、現場で得られる情報はノウハウに偏りがちであり勘所を掴むまで時間を要した。
本書は、主にRoll To Roll 塗工・乾燥の開発から製造までに携わる初学者から経験者までを対象にまとめたものである。
塗工方式は汎用のスロット塗工を中心に、グラビア、ブレード、さらには実験で活用するスピン方式まで全方位的に詳説した。乾燥についても、汎用の熱風乾燥に加え、赤外線方式や実験室のホットプレートとの違いなどをまとめた。さらに、塗工液の表面張力や粘性に関する基礎的考え方や、製造中の異物と対策、機能性フィルムのハジキや風ムラに影響するクリーンルーム設計についても詳説した。
理論と現場の実践力を網羅した塗工技術が皆様から広まれば、機能性フィルム業界の発展にもつながるであろう。本書を読まれた皆様が塗工製造技術を高め、新しい機能性フィルムの開発や製品の品質向上を実現されることをお祈り申し上げる。
(「はじめに」より編集)
目次
第1章 Roll To Roll 塗工方式の分類
はじめに
1. フィルム製品の歴史と分類
2. 種々の塗工方式と塗工範囲
3. 前計量と後計量
4. ダイ塗工は三種しかない
5. 量産におけるRoll To Roll工程
6. 実験室で活用されるバッチ方式
第2章 スロット塗工
はじめに
1. 塗工分野におけるスロット塗工の位置付け
2. スロット塗工による薄塗りと厚塗り
2.1 スロットダイの構造
2.2 薄層塗工の理論と実際
2.3 厚塗り塗工の操作条件(背面減圧を使わない場合)
2.4 より薄く、より厚く(OverBiteとUnderBite)
3. 同時重層塗工
3.1 重層スロットダイ
3.2 粘度バランス
3.3 中間リップの流動(上下層の界面位置)
3.4 留意点
4. スロット塗工のテンションド・ウェブ方式
4.1 リップ形状とフィルムにかかる面圧
4.2 塗工可能領域
4.3 スロット渦とWet膜厚
4.4 リップ形状と塗工可能領域
5. スロットダイの設計
5.1 構造の分類
5.2 マニホールドとスロットの役割分担
5.3 マニホールドとスロットの流動(円管と平行平板間のHagen-Poiseuille 式)
5.4 塗布量分布を生じる要因
5.5 塗布量分布を均一化する方法
5.6 塗工端部の厚み調整方法
6. 塗工液の非ニュートン粘性と剪断速度
6.1 指数則(Power Law)
6.2 塗工位置と剪断速度
6.3 Couette-Poiseuille 式によるビード部の剪断速度の見積もり
6.4 Sakiadis の境界層理論による動的接触点近傍の剪断速度の見積もり
7. 非ニュートン粘性を考慮したスロットダイ設計
7.1 スロット偏差起因の塗工量分布への影響
7.2 マニホールド圧損起因の塗工量分布への影響
8. LIB 電極の両面塗工と間欠塗工
8.1 テンションドウェブ方式による両面塗工
8.2 間欠塗工
8.3 塗付け厚塗りの緩和策(バルブ・ポンプ・ギャップの連動)
8.4 ビード物質収支による厚塗りの考察
8.5 塗り終わりのスダレと厚み調整
8.6 数値シミュレーション
9. 工品質向上に有効な付帯設備
9.1 バックアップロール振動と撓みの対策
9.2 ヒートロールによる巻き芯写り対策
9.3 背面減圧の圧力振動と立ち上がりの両立(バッファとオリフィス)
第3章 ブレード塗工(ナイフ塗工)
はじめに
1. コンマコーター®の構造
2. 塗工量の見積もり
2.1 平行な間隙を通過する場合(Couette流)
2.2 直線ナイフの狭まり流路を通過する場合(潤滑流動モデル)
2.3 コンマコーター®の場合
3. コンマロールの変形対策
4. 液溜めとバックプレートの設置方法
第4章 グラビア塗工
はじめに
1. グラビアの三大要素
2. 第四の要素:ドクターブレード
3. グラビア塗工方式の分類
4. グラビアシリンダー
5. グラビアロール版
5.1 格子型(Quadra Gravure)
5.2 ピラミッド型(Pyramid)
5.3 斜線型(TriHelicoid)
5.4 斜数(口径)とセル容積
5.5 セルから基材への転写と濡れ性
6. フォワード方式(正転)
6.1 ギャップと液溜まり
6.2 リブ(スジ)欠陥の原因と対策
6.3 塗工厚み
7. リバース方式(反転)
7.1 転写側メニスカスとリブ(スジ)
7.2 DCL 側メニスカスとカスケード
7.3 塗工可能領域
7.4 塗工厚み
8. ドクターチャンバー方式
9. マイクログラビアTM 方式
10. グラビア塗工の特許出願
11. ドクターブレードについて
11.1 ドクターブレードの当て角
11.2 ドクターブレードの種類
11.3 平行刃
11.4 テーパー刃
11.5 材質
11.6 耐摩耗
11.7 当て板とホルダー
11.8 ドクターブレードによる掻き落とし
11.9 ロール塗工の掻き落とし
11.10 エッジ処理
第5章 バー塗工
1. 薄塗りに適したバー塗工
2. ワイヤーバーと溝付きバー
3. ワイヤー筋のレベリング
4. 塗工量の見積もり~実験室の手塗りバー(無回転)と量産バー(回転)
5. リブを避けるために
5.1 発生機構と対策
5.2 リブ発生速度の見積もり
6. 段ムラの回避策
6.1 バー芯金の作り方
6.2 受け座の形状
6.3 駆動系
6.4 カップリング(軸継ぎ手)
まとめ
第6章 ディップ塗工
はじめに
1. ディップ塗工の歴史
2. 薄塗りと厚塗り
2.1 薄塗り(毛管駆動)
2.2 厚塗り(排出駆動)
3. 排出区間ごとの挙動
4. 定常厚みの理論
5. 実際の塗工厚み
まとめ
第7章 スピン塗工
1. 実験と量産
2. 原理説明
3. 膜厚の推移
4. 終盤の乾燥支配
5. ペロブスカイト太陽電池のスピン塗工による開発事例
5.1 スピン塗工によるサンプル作製
5.2 ガス供給の影響
5.3 Roll To Roll化の留意点
第8章 メニスカス塗布(キャピラリーコート法)
はじめに
1. メニスカス塗布方式の概要
2. キャピラリーコート法
3. ペロブスカイト太陽電池の1ステップ・メニスカス塗布法
4. スロット塗工との違い(後計量)
第9章 乾燥
はじめに
1. 熱風乾燥の三要素
2. 熱風乾燥の乾燥速度式
3. 量産設備における乾燥風の取り回し
4. ガス濃度および膜温把握に有用な空気線図
5. 飽和蒸気圧の温度依存性
6. 水以外の溶媒における空気線図
7. ルイス数とは?(物質拡散と熱拡散の比)
8. 蒸発潜熱の推算
9. 飽和蒸気圧の温度依存性の推算(アントワン式の定数)
10. 爆発下限界(LEL)
11. 定率乾燥と減率乾燥
12. 限界点と仮想点
13. 減率乾燥以降の乾燥速度計算
14. 減率乾燥を実測で見積もる方法
15. 乾燥ノズルの形態と乾燥能力
16. 残留溶媒の調整(絶乾と調湿)
17. 分散系の乾燥(偏析・沈降・凝集)
18. 実験室の乾燥(スピン塗工)
19. 実験室のホットプレート乾燥
20. 赤外線乾燥
20.1 輻射と赤外線の分類
20.2 赤外線波長と溶剤の吸収
20.3 熱風との比較
20.4 近赤外線波長制御ヒーター
20.5 炉内の送風による冷却
20.6 LIB の偏析改善
21. 塗工室の風ムラ対策
21.1 塗工室の差圧管理
21.2 塗工室の気流解析
21.3 密度流と塗膜の遮風
第10章 表面張力
はじめに
1. 水系塗工における表面張力の重要性
2. 環境問題で再評価され始めた水系塗工
3. 界面活性剤の添加量と表面張力
4. 表面張力の塗工性への寄与
5. 表面形成後の界面活性剤の拡散と配向
6. 表面拡張と表層収縮
7. 最大泡圧法による動的表面張力測定
8. 動的表面張力の濃度依存性
おわりに
第11章 基材の濡れ性
はじめに
1. 接触角
2. Wenzel理論
3. Cassie理論
4. UVによる表面改質
第12章 塗工液の濃度と粘度
はじめに
1. 微粒子を含む液の粘性
1.1 希薄溶液
1.2 高濃度液
2. 高分子溶液の粘性
2.1 一本の高分子鎖の状態
2.2 高分子鎖の重なり合い
2.3 非ニュートン性への影響
3. 温度の影響
まとめ
第13章 Roll To Roll工程のクリーン化
はじめに
1. クリーンルーム
2. 換気頻度
3. エアフィルターの塵埃捕捉能力
4. 塗工室の気流と風ムラ
5. クリーン度診断
6. フィルムの除電
6.1 静電気が塵埃付着に及ぼす影響
6.2 各種除電方式
6.3 除電器とフィルムの距離
6.4 放電電極の劣化
6.5 電極の設置位置
6.6 パスロールとの位置関係
まとめ
第14章 Roll To Roll解析ツール
あとがき
※現在編集中のため目次の一部が変更となる場合がございます。
概要
塗工に関する論文は学術理論が中心で、現場の情報は経験的ノウハウに偏りがちです。本書ではその間を埋めることを意識し、塗工プロセスを現象理解の視点から整理しています。
●Roll to Roll塗工・乾燥プロセスを体系的に理解
開発から製造までのRoll to Roll塗工・乾燥プロセスを対象に、塗工・乾燥・界面現象など、塗工品質に関わる要素を横断的に整理しています。
●主要な塗工方式の原理と特徴を解説
スロット塗工を中心に、ブレード、グラビア、バー、ディップ、スピン塗工、メニスカス塗布など、代表的な塗工方式の原理と特徴を整理しています。
●塗工品質トラブルを理解するためのプロセス知識
表面張力や粘性といった塗工液の基礎物性に加え、異物対策やクリーンルーム設計など、製造現場で品質に影響する要素を解説しています。
● 機能性フィルム、電池材料、電子材料などのRoll to Roll製品の製造技術者の方
● 塗工・乾燥工程のトラブル原因を理解し、対策したい生産技術者の方
● 塗工プロセスを体系的に理解したい研究者・開発者の方
● 塗工技術を理論と現場の両面から学びたい初学者〜経験者の方
第1章 Roll To Roll塗工方式の分類
Roll To Roll塗工の基本概念と各種塗工方式の位置づけを整理。フィルム用途と塗膜構造の関係を概観し、粘度・Wet厚みによる塗工方式の適用範囲、前計量・後計量の違い、動的/静的接触点によるダイ塗工の分類などを通じて、塗工プロセス全体を俯瞰する基礎知識を解説します。
第2章 スロット塗工
スロット塗工の流動原理と装置設計を解説。ビード形成、背面減圧、Bite調整などの操作条件と安定塗工の成立条件を整理し、非ニュートン粘性を踏まえたダイ内部流動や幅方向分布への影響を説明。LIB電極の両面塗工や間欠塗工、設備振動対策など量産工程での品質向上のポイントも理解できます。
第3章 ブレード塗工(ナイフ塗工)
ブレード塗工の基本原理とコンマコーターの流動挙動を解説。Couette流と潤滑流動モデルによる膜厚見積もりを示し、コンマコーター特有の流動特性を整理します。さらにロール変形対策や液溜め設計、泡混入防止など、厚膜塗工を安定させるための装置設計と運用ポイントを紹介します。
第4章 グラビア塗工
薄層塗工で広く用いられるグラビア塗工の原理を整理。フォワード/リバース方式やマイクログラビア、ドクターチャンバーなど装置構成を解説し、セル形状や濡れ性、速度比が転写率や塗膜厚に与える影響を説明。リブやカスケードなど欠陥発生メカニズムと対策も理解できます。
第5章 バー塗工
極薄膜塗工に適したバー塗工の原理と実務設計を解説。ワイヤーバーや溝付きバーの構造、塗工量を決める幾何学関係、Orchard式によるレベリング理論を整理します。さらにリブや段ムラなど欠陥の発生要因と、芯金径や駆動系など装置設計による回避策も理解できます。
第6章 ディップ塗工
ディップ塗工の膜形成原理と膜厚制御の考え方を整理。引き上げ速度によって毛管駆動による薄膜形成と、重力・粘性バランスによる厚膜形成に分かれることを説明します。定常膜厚理論や非定常塗工で生じる膜厚分布の要因、研究用途での活用方法も理解できます。
第7章 スピン塗工
遠心力による液膜拡散と乾燥による膜固定から成るスピン塗工の膜形成プロセスを解説。回転数・粘度・時間などが膜厚に与える影響や乾燥条件の役割を整理し、ペロブスカイト太陽電池の事例を通じて、実験室結果をRoll To Roll量産へスケールアップする際の課題を理解できます。
第8章 メニスカス塗布(キャピラリーコート法)
メニスカス柱を利用して薄膜を形成する塗工方式の原理を解説。スロット塗工に似た構造を持ちながら膜厚がメニスカス状態に依存する後計量型塗工である特徴や、低速塗工・揮発成膜の特性を整理します。ペロブスカイト太陽電池量産技術への応用動向も紹介します。
第9章 乾燥
乾燥工程で温度・風速・溶媒濃度が乾燥速度と膜温を決める仕組みを解説。ノズル形状や炉内気流が乾燥能力や膜ムラに与える影響、定率乾燥から減率乾燥への移行、分散塗膜で起こる偏析や沈降の要因などを整理し、乾燥条件設計の考え方を理解できます。
第10章 表面張力
水系塗工で発生するはじきや塗りムラの原因となる表面張力の役割を解説。静的表面張力と動的表面張力の違い、界面活性剤の拡散・配向、CMCと添加量の関係を整理し、動的表面張力の測定法やマランゴニ効果による膜欠陥の発生メカニズムを理解できます。
第11章 基材の濡れ性
接触角と表面エネルギーの観点から基材の濡れ性を解説。Youngの関係に加え、表面粗さが濡れ性に与える影響をWenzel理論やCassie理論で整理します。さらにコロナ・プラズマ・UV処理などの表面改質と経時変化を説明し、塗工性改善の基本を理解できます。
第12章 塗工液の濃度と粘度
塗工液の濃度と粘度を支配する物理要因を整理。微粒子分散系の増粘機構や高分子溶液の絡み合いによる粘度上昇を説明し、非ニュートン性や温度依存性の特徴を解説します。塗工液配合設計や乾燥工程での粘度変化を理解するための基礎を学べます。
第13章 Roll To Roll工程のクリーン化
精密塗工製品で問題となる異物欠陥を防ぐための工程クリーン化を解説。クリーンルームの清浄度や換気回数、HEPA/ULPAフィルターの役割と気流設計を整理し、塗工室のクリーン化と風ムラのトレードオフを説明。フィルム帯電と除電対策の基本も理解できます。
第14章 Roll To Roll解析ツール
塗工現象を理解するだけでなく、実際の工程条件を簡易的に計算・検討するための解析ツールを紹介。
書籍趣旨
機能性フィルムの開発や製造の課題を遂行する際、欠陥やトラブルに悩まされることが多いであろう。筆者自身、生産技術の研究部門で塗工理論を学んだ後に、 製造部門の技術者として、生産性や品質向上に従事したが、塗工に関する論文は学術的すぎで、現場で得られる情報はノウハウに偏りがちであり勘所を掴むまで時間を要した。
本書は、主にRoll To Roll 塗工・乾燥の開発から製造までに携わる初学者から経験者までを対象にまとめたものである。
塗工方式は汎用のスロット塗工を中心に、グラビア、ブレード、さらには実験で活用するスピン方式まで全方位的に詳説した。乾燥についても、汎用の熱風乾燥に加え、赤外線方式や実験室のホットプレートとの違いなどをまとめた。さらに、塗工液の表面張力や粘性に関する基礎的考え方や、製造中の異物と対策、機能性フィルムのハジキや風ムラに影響するクリーンルーム設計についても詳説した。
理論と現場の実践力を網羅した塗工技術が皆様から広まれば、機能性フィルム業界の発展にもつながるであろう。本書を読まれた皆様が塗工製造技術を高め、新しい機能性フィルムの開発や製品の品質向上を実現されることをお祈り申し上げる。
(「はじめに」より編集)
目次
第1章 Roll To Roll 塗工方式の分類
はじめに
1. フィルム製品の歴史と分類
2. 種々の塗工方式と塗工範囲
3. 前計量と後計量
4. ダイ塗工は三種しかない
5. 量産におけるRoll To Roll工程
6. 実験室で活用されるバッチ方式
第2章 スロット塗工
はじめに
1. 塗工分野におけるスロット塗工の位置付け
2. スロット塗工による薄塗りと厚塗り
2.1 スロットダイの構造
2.2 薄層塗工の理論と実際
2.3 厚塗り塗工の操作条件(背面減圧を使わない場合)
2.4 より薄く、より厚く(OverBiteとUnderBite)
3. 同時重層塗工
3.1 重層スロットダイ
3.2 粘度バランス
3.3 中間リップの流動(上下層の界面位置)
3.4 留意点
4. スロット塗工のテンションド・ウェブ方式
4.1 リップ形状とフィルムにかかる面圧
4.2 塗工可能領域
4.3 スロット渦とWet膜厚
4.4 リップ形状と塗工可能領域
5. スロットダイの設計
5.1 構造の分類
5.2 マニホールドとスロットの役割分担
5.3 マニホールドとスロットの流動(円管と平行平板間のHagen-Poiseuille 式)
5.4 塗布量分布を生じる要因
5.5 塗布量分布を均一化する方法
5.6 塗工端部の厚み調整方法
6. 塗工液の非ニュートン粘性と剪断速度
6.1 指数則(Power Law)
6.2 塗工位置と剪断速度
6.3 Couette-Poiseuille 式によるビード部の剪断速度の見積もり
6.4 Sakiadis の境界層理論による動的接触点近傍の剪断速度の見積もり
7. 非ニュートン粘性を考慮したスロットダイ設計
7.1 スロット偏差起因の塗工量分布への影響
7.2 マニホールド圧損起因の塗工量分布への影響
8. LIB 電極の両面塗工と間欠塗工
8.1 テンションドウェブ方式による両面塗工
8.2 間欠塗工
8.3 塗付け厚塗りの緩和策(バルブ・ポンプ・ギャップの連動)
8.4 ビード物質収支による厚塗りの考察
8.5 塗り終わりのスダレと厚み調整
8.6 数値シミュレーション
9. 工品質向上に有効な付帯設備
9.1 バックアップロール振動と撓みの対策
9.2 ヒートロールによる巻き芯写り対策
9.3 背面減圧の圧力振動と立ち上がりの両立(バッファとオリフィス)
第3章 ブレード塗工(ナイフ塗工)
はじめに
1. コンマコーター®の構造
2. 塗工量の見積もり
2.1 平行な間隙を通過する場合(Couette流)
2.2 直線ナイフの狭まり流路を通過する場合(潤滑流動モデル)
2.3 コンマコーター®の場合
3. コンマロールの変形対策
4. 液溜めとバックプレートの設置方法
第4章 グラビア塗工
はじめに
1. グラビアの三大要素
2. 第四の要素:ドクターブレード
3. グラビア塗工方式の分類
4. グラビアシリンダー
5. グラビアロール版
5.1 格子型(Quadra Gravure)
5.2 ピラミッド型(Pyramid)
5.3 斜線型(TriHelicoid)
5.4 斜数(口径)とセル容積
5.5 セルから基材への転写と濡れ性
6. フォワード方式(正転)
6.1 ギャップと液溜まり
6.2 リブ(スジ)欠陥の原因と対策
6.3 塗工厚み
7. リバース方式(反転)
7.1 転写側メニスカスとリブ(スジ)
7.2 DCL 側メニスカスとカスケード
7.3 塗工可能領域
7.4 塗工厚み
8. ドクターチャンバー方式
9. マイクログラビアTM 方式
10. グラビア塗工の特許出願
11. ドクターブレードについて
11.1 ドクターブレードの当て角
11.2 ドクターブレードの種類
11.3 平行刃
11.4 テーパー刃
11.5 材質
11.6 耐摩耗
11.7 当て板とホルダー
11.8 ドクターブレードによる掻き落とし
11.9 ロール塗工の掻き落とし
11.10 エッジ処理
第5章 バー塗工
1. 薄塗りに適したバー塗工
2. ワイヤーバーと溝付きバー
3. ワイヤー筋のレベリング
4. 塗工量の見積もり~実験室の手塗りバー(無回転)と量産バー(回転)
5. リブを避けるために
5.1 発生機構と対策
5.2 リブ発生速度の見積もり
6. 段ムラの回避策
6.1 バー芯金の作り方
6.2 受け座の形状
6.3 駆動系
6.4 カップリング(軸継ぎ手)
まとめ
第6章 ディップ塗工
はじめに
1. ディップ塗工の歴史
2. 薄塗りと厚塗り
2.1 薄塗り(毛管駆動)
2.2 厚塗り(排出駆動)
3. 排出区間ごとの挙動
4. 定常厚みの理論
5. 実際の塗工厚み
まとめ
第7章 スピン塗工
1. 実験と量産
2. 原理説明
3. 膜厚の推移
4. 終盤の乾燥支配
5. ペロブスカイト太陽電池のスピン塗工による開発事例
5.1 スピン塗工によるサンプル作製
5.2 ガス供給の影響
5.3 Roll To Roll化の留意点
第8章 メニスカス塗布(キャピラリーコート法)
はじめに
1. メニスカス塗布方式の概要
2. キャピラリーコート法
3. ペロブスカイト太陽電池の1ステップ・メニスカス塗布法
4. スロット塗工との違い(後計量)
第9章 乾燥
はじめに
1. 熱風乾燥の三要素
2. 熱風乾燥の乾燥速度式
3. 量産設備における乾燥風の取り回し
4. ガス濃度および膜温把握に有用な空気線図
5. 飽和蒸気圧の温度依存性
6. 水以外の溶媒における空気線図
7. ルイス数とは?(物質拡散と熱拡散の比)
8. 蒸発潜熱の推算
9. 飽和蒸気圧の温度依存性の推算(アントワン式の定数)
10. 爆発下限界(LEL)
11. 定率乾燥と減率乾燥
12. 限界点と仮想点
13. 減率乾燥以降の乾燥速度計算
14. 減率乾燥を実測で見積もる方法
15. 乾燥ノズルの形態と乾燥能力
16. 残留溶媒の調整(絶乾と調湿)
17. 分散系の乾燥(偏析・沈降・凝集)
18. 実験室の乾燥(スピン塗工)
19. 実験室のホットプレート乾燥
20. 赤外線乾燥
20.1 輻射と赤外線の分類
20.2 赤外線波長と溶剤の吸収
20.3 熱風との比較
20.4 近赤外線波長制御ヒーター
20.5 炉内の送風による冷却
20.6 LIB の偏析改善
21. 塗工室の風ムラ対策
21.1 塗工室の差圧管理
21.2 塗工室の気流解析
21.3 密度流と塗膜の遮風
第10章 表面張力
はじめに
1. 水系塗工における表面張力の重要性
2. 環境問題で再評価され始めた水系塗工
3. 界面活性剤の添加量と表面張力
4. 表面張力の塗工性への寄与
5. 表面形成後の界面活性剤の拡散と配向
6. 表面拡張と表層収縮
7. 最大泡圧法による動的表面張力測定
8. 動的表面張力の濃度依存性
おわりに
第11章 基材の濡れ性
はじめに
1. 接触角
2. Wenzel理論
3. Cassie理論
4. UVによる表面改質
第12章 塗工液の濃度と粘度
はじめに
1. 微粒子を含む液の粘性
1.1 希薄溶液
1.2 高濃度液
2. 高分子溶液の粘性
2.1 一本の高分子鎖の状態
2.2 高分子鎖の重なり合い
2.3 非ニュートン性への影響
3. 温度の影響
まとめ
第13章 Roll To Roll工程のクリーン化
はじめに
1. クリーンルーム
2. 換気頻度
3. エアフィルターの塵埃捕捉能力
4. 塗工室の気流と風ムラ
5. クリーン度診断
6. フィルムの除電
6.1 静電気が塵埃付着に及ぼす影響
6.2 各種除電方式
6.3 除電器とフィルムの距離
6.4 放電電極の劣化
6.5 電極の設置位置
6.6 パスロールとの位置関係
まとめ
第14章 Roll To Roll解析ツール
あとがき
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