■1日目■ 2026年9月28日(月) 10:30~16:30
<粘弾性挙動並びに時間-温度換算則の理解>
プラスチック成形品の残留応力の発生メカニズムと解放メカニズム
~粘弾性に起因する残留応力の発生と解放を予測する~
<セミナー講師>
金沢工業大学名誉教授 工学博士
コンサルSMS 代表 新保 實 氏
<趣旨>
中国の四文字格言に“格物致知:かくぶつちち”というのがあります。格物は、物(もの)に格(いた)るといい、一つ一つの物事の道理を窮めることを言っています。致知は、知(ち)を致(いた)すといい、知識を推し極めることを意味します。つまり、物事を理解するには、その道理を窮めなさいと言っています。
プラスチック成形品は成形時に残留応力が発生する場合があり、それによって変形や破壊といった不具合が起こりえます。プラスチックは他の材料に比べて、材料定数が時間並びに温度によって著しく変化します。材料定数が時間と温度によって変化する特性を粘弾性挙動と言います。粘弾性挙動は、時間や温度によって同一材料でも、ある場所では粘性、ある場所では弾性、そしてある場所では粘弾性といった振る舞いをします。このような粘弾性挙動に起因して、プラスチック成形品には成形時に残留応力が生ずる場合があります。また、この残留応力は、成形後に粘弾性挙動に起因して解放され、寸法変化や破壊等の経時的な不良を引き起こします。プラスチックの成形時に生ずる残留応力の理解は、プラスチックの粘弾性挙動を窮めることで、容易に可能となります。
ここでは、プラスチックの最も重要な粘弾性挙動の解釈法とその利用法、そして粘弾性挙動に伴う残留応力の発生機構及び解放機構を説明します。さらに、時間-温度換算則の確認方法と、この換算則を用いた残留応力の解放に伴う変形及び強度の予測法、加速試験法等の各事象への利用方法について説明します。最後に、残留応力低減の新しい種々の射出成形法を紹介します。
<得られる知識、技術>
・プラスチックの基本特性である粘弾性特性及び熱粘弾性特性が理解できる。
・残留応力の発生機構が理解できる。
・残留応力の理論的、実験的解析方法が理解できる。
・残留応力の低減方法並びに積極的な利用法が修得できる。
・粘弾性特性・熱粘弾性特性を基準とした強度、変形の力学的取扱いの基礎が修得できる。
・粘弾性特性に成立する時間-温度換算則の概念が修得できる。
・時間-温度換算則を用いた強度、変形の長期予測法と信頼性評価法の基礎が修得できる。
・残留応力+溶剤による耐ストレスクラッキング性が修得できる。
・残留応力低減の新射出成形法が習得できる。
<プログラム>
1.プラスチックの重要な基本特性
1.1 弾性・粘性・粘弾性の解釈法
1.2 弾性・粘性・粘弾性の利用法
1.3 粘弾性に伴う特異現象(クリープ挙動、緩和挙動)
2.プラスチックの力学の基礎
2.1 プラスチックに生ずる応力とひずみの解釈
2.2 粘弾性挙動と粘弾性力学モデル
2.3 応力-ひずみ関係式(構成方程式)
・応力-ひずみ関係式の誘導方法
3.粘弾性挙動に伴う残留応力の発生メカニズム
3.1 残留応力の発生要因の説明
3.2 硬化過程で生じる残留応力の発生メカニズム
3.3 冷却過程で生じる残留応力の発生メカニズム
3.4 残留応力の理論的・実験的解析法
4.時間-温度換算則の解釈とその利用法
4.1 時間-温度換算則の基礎概念
4.2 時間-温度換算則の成立の有無の確認方法
4.3 時間-温度移動因子(アーレニュウス型、WLF型)
4.4 時間-温度換算則の利用法
5.時間-温度換算則を用いた各種事象の予測法
5.1 クリープ変形の長期予測法
5.2 残留応力開放に伴う変形の長期予測法
5.3 CFRPの変形、強度の経時的変化の予測法
5.4 プラスチックの諸特性の加速試験法
6.残留応力低減の新射出成形法の紹介
6.1 GAP(Gas・Assist・Pressure:ガスアシストプレッシャー法))について
6.2 GCPを用いた射出発泡成形法、射出中空成形法、射出圧空成形法
□質疑応答□
■2日目■ 2026年9月29日(火) 10:30~16:30
高分子技術者のためのレオロジー【入門と実践活用】
~材料設計から成形加工にリサイクルまで~
~付加価値の創出とトラブル解決に活かせるレオロジーの知識と使い方~
<セミナー講師>
北陸先端科学技術大学院大学 先端科学技術研究科 マテリアルサイエンス系 物質化学フロンティア研究領域
教授 工学博士 山口 政之 氏
<趣旨>
高分子物質の最大の特徴は分子が著しく長いことであり、その特徴を上手く利用して材料設計や成形加工を行わねばなりません。そのためには高分子レオロジーの知見が必要不可欠です。本講座では、数式をほとんど使わずにレオロジーの本質を理解していただき、それを高分子材料の設計や構造解析、さらにはトラブルシューティングを含めた成形加工技術に応用してもらうことを目的としています。付加価値を高める材料設計・リサイクルレジンの注意点なども対象とします。事前の基礎知識などは不要です。
<プログラム>
1.レオロジーの概念
1.1 弾性と粘性の本質
-粘弾性の基本法則を理解する-
1.2 緩和時間
-緩和現象を定性的に理解する-
1.3 デボラ数
-成形加工で最も重要なパラメータ、トラブルシューティングの基礎-
2.線形粘弾性の基礎
2.1 ボルツマンの重ね合わせの原理
-レオロジーは足し算だけで大丈夫-
2.2 動的粘弾性
-難しい数式を使わずに動的弾性率を理解する-
2.3 緩和スペクトル
-線形粘弾性測定の目的を理解する-
2.4 周波数依存性と温度依存性
-線形粘弾性の測定方法-
2.5 合成曲線
-構造変化の確認手法、測定できない領域の情報を得る方法-
3.成形加工に必要なレオロジー特性
3.1 牽引流と圧力流
-せん断流動の与え方-
3.2 高分子溶融体のせん断粘度
-フローカーブの読み方-
3.3 高分子溶融体が示す弾性
-スウェル比の決定因子、成形法に適した粘弾性特性とは?-
3.4 圧力差によるせん断流動
-ダイでのせん断速度を計算する、スリップ速度を評価する-
3.5 MFRの落とし穴
-MFRでは予測できない流動性-
3.6 伸長流動下のレオロジー特性
-伸長粘度成長曲線の読み方と評価法およびその重要性-
3.7 成形加工性と伸長粘度
-熱成形・ブロー成形・発泡成形性など-
3.8 伸長粘度・溶融張力の制御方法
-成形加工性の改良方法、溶融張力の評価法-
4.トラブルシューティングとレオロジー
4.1 せん断粘度と伸長粘度
-成形法と流動モード-
4.2 メルトフラクチャー
-発生機構とその対策-
4.3 Tダイ成形
-ネックイン・レゾナンスの対処法、高強度化-
4.4 インフレーション成形
-外部ヘイズ、バブルの安定性向上-
4.5 目ヤニ、フィッシュアイ
-発生機構と解析方法、対策-
5.レオロジーを活かした材料設計
5.1 長鎖分岐のキャラクタリゼーション
(1)希薄溶液物性による評価
(2)線形粘弾性による評価
(3)非線形粘弾性による評価
5.2 射出成形への応用
(1)成形体の構造形成
(2)成形サイクルの短縮
(3)分子量を下げずに高流動化させる手法
(4)機能性高分子の表面局在化
5.3 レオロジー改質による高性能化
(1)流動誘起結晶化と高剛性化
(2)長鎖分岐ポリマーの添加による加工改質
(3)収縮率とその異方性の制御
5.4 リサイクルレジンのレオロジー -トラブルの原因とその対策-
(1)劣化対策 ―ラジカル発生、加水分解―
(2)メルトメモリー効果 ―結晶の記憶―
(3)せん断履歴効果 ―加工履歴の記憶―
□質疑応答□