【1日目】 2026年3月5日(木) 10:30~16:30
立体障害の活用と反応性制御に向けた
『立体異性体を自在に読み解く・制御する』演習講座
分子を立体で捉える力を身につけることを目指すセミナーです。
紙に描かれた構造式は平面的ですが、実際の分子は三次元の空間で形を変え、相手を選び、化学的性質を大きく左右します。立体を正しく理解することは、反応性の予測や立体選択的合成に必須です。
本講座では、構造異性体・立体異性体の基礎から、不斉炭素、エナンチオマー、ジアステレオマー、シス/トランス、E/Z までを体系的に整理します。分子を立体的に見るための空間認識のコツや、紙の図を三次元でイメージする方法も、演習を交えて体得していただきます。
立体が少し変わるだけで、甘味の違いや毒性の有無が生まれる理由を理解すると、分子の“見え方”が一気に変わります。さらに、立体障害の活かし方、欲しい立体異性体だけを作る・分ける実務的アプローチ(キラルカラムや微生物利用など)にも触れ、立体化学の応用力を高めます。初心者は立体化学の基本がクリアになり、実務者は立体を使いこなす感覚を磨ける内容です。
<プログラム>
1.異性体の区別をしよう
1.1 大事なのは空間認識
1.2 構造異性体、立体異性体の区別
1.3 演習 2つの分子が何の関係にあるか理解しよう
2.分子を立体的に見るためには
2.1 三次元の世界にあるものを二次元で表すには?
2.2 三種類の結合を区別しよう
2.3 立体的に見えたら、回転させてみよう
2.4 演習 紙に書かれた分子を立体に見て、回転させてみよう
3.鏡の向こうの世界(エナンチオマー)
3.1 不斉炭素って何?
3.2 その分子を鏡に写したら、何が見える?:エナンチオマー
3.3 ふたつのエナンチオマーをR/S表記法で区別しよう
3.4 鏡に写しても、分子の性質は同じ?実は大きな違いが
3.5 演習 エナンチオマー:鏡の向こうの分子が見えるようになろう
4.不斉炭素がふたつになったらもっと多彩な世界が(ジアステレオマー)
4.1 不斉炭素が2つになったらどうなる?
4.2 エナンチオマーとジアステレオマー
4.3 甘い糖、甘くない糖。それはほんの少しの違い
4.4 お米とコピー用紙、構成している分子はほとんど同じ
4.5 演習 ジアステレオマー:「これとこれは違うものだ」を理解しよう
5.二重結合が回らないと何が起こる?(シス-トランス異性体)
5.1 回る結合、回らない結合
5.2 どうやって区別しよう?(シスとトランス)
5.3 シスとトランスが使えない!どうしよう!(EとZ)
5.4 何かと話題の「トランス脂肪酸」
5.5 光を当てて二重結合を回転させよう。何に使える?
5.6 シスとトランス、この違いで化合物の性質は大きく変わる
5.7 演習 シスとトランス、EとZを区別しよう
6.立体障害:それは敵にも味方にもなります
6.1 置換基には体積がある:原子半径を意識してみよう
6.2 原子のつながり方で変われば、かさばり方も変わる
6.3 立体障害を味方につけよう(壊れない分子、溶けやすい分子)
6.4 演習 分子の体積を意識して、反応の起こりにくさを理解しよう
7.立体選択的合成:欲しい立体異性体だけ作りたい
7.1 立体が違えば、毒にも薬にもなる
7.2 当たりの分子だけ、どうやって分けよう?(キラルカラム)
7.3 当たりの分子だけ、微生物に作ってもらう
7.4 立体選択的合成入門:どうすれば、立体異性体の作り分けができる?
7.5 演習 どの立体異性体ができるかを予測しよう
□質疑応答□
【2日目】2026年3月6日(金) 10:30~16:30
反応経路の理解と生成物の予測・制御のための
『有機反応機構を読む、予測・設計する』演習講座
有機反応のしくみが「手に取るように見える」ようになることを目指すセミナーです。
結合がどこで切れ、どこで新しく生まれるのか、電子がどこから来てどこへ流れるのか──反応機構を理解することで、丸暗記に頼らず、初めて見る反応でも筋道を立てて予測できるようになります。
講義では、電子の偏りの読み取り方、曲がった矢印の正しい描き方、立体的な混み合いの判断、反応経路の比較など、実務で必要となる基礎ロジックを徹底的に整理します。
そのうえで、演習問題を解き、考え、また解き、解説を聞いて「そういうことか!」と腑に落とすプロセスを重ね、反応機構を自分の力で読めるようになるための実践的トレーニングを行います。
合成ルートの妥当性評価、副生成物の原因究明、条件変更時の予測、初見の論文反応の理解など、現場でそのまま役立つ「反応を見る目」を身につけたい方に特におすすめです。
基礎を固めたい初心者から、実務で悩みがちな中堅研究者まで、反応機構の読解力を確実に底上げできる内容となっています。
<プログラム>
1.反応機構、どうして要るの?
1.1 その反応、丸暗記しなくっていいです!
1.2 反応の基本は、結合を切ったり貼ったり
1.3 反応機構を理解したら説明できること
1.4 「曲がった矢印」は皆さんの味方
1.5 反応経路の迷宮で迷わないための3つのヒント
2.電気陰性度を理解したら、反応機構の半分を理解できる
2.1 すべての電子を考えなくてもいい(価電子)
2.2 原子と原子をつないでいる共有電子対
2.3 有機反応を理解するのに一番大事なのは電気陰性度
2.4 反応は電子の余っているところと電子の足らないところで起こる
2.5 結合を切ったり貼ったり:曲がった矢印を描いてみよう
2.6 演習 結合の分極:電子の足らないところ、余ってるところが見えてくる
3.アルケンへの付加反応
3.1 アルケンへのハロゲン化水素の付加は二段階反応
3.2 反応機構を理解すれば、「何が付加しても同じ」とわかる
3.3 生成物がふたつできるぞ?どっちがいっぱいできる?
3.4 曲がった矢印を使って、「反応の途中」を見ていこう
3.5 生成物の安定性を考えたら、主生成物が見えてくる
3.6 演習 電子の流れを描いて、生成物を予測しよう
4.ハロゲン化アルキルへの求核置換
4.1 基本のルールはたった3つ。生成物を丸暗記しなくていい!
4.2 ロジックを積み上げていけば、生成物が見えてくる
4.3 反応は立体的に混み合っているところで起こりにくい
4.4 反応の途中を理解すれば、生成物の立体も見えてくる
4.5 演習 曲がった矢印を書いて、主生成物を予測しよう
5.ハロゲン化アルキルの脱離置換
5.1 やはり、基本のルールはたったの3つ
5.2 二重結合ができる様子を見ていこう
5.3 ザイツェフ則:どれが主生成物かを見分けるルール
5.4 演習 二重結合はどこに入る?
6.アルコールの置換および脱離反応
6.1 ハロゲン化アルキルの反応がわかれば、アルコールの反応もわかる
6.2 実は反応機構は同じです。別々に覚えるとかナンセンス!
6.3 酸を一滴だけ入れる理由:反応を進めるコツ
6.4 演習 アルコールの反応を理解しよう
7.カルボニル化合物の反応
7.1 「何これ?こんなにいっぱい覚えられない!」と思いますよね?
7.2 カルボニル基への付加にはふたつのパターンがある
7.3 「反応経路の迷宮で迷わないための3つのヒント」再訪
7.4 「あれ?全部、同じじゃないか?」に気がつけばしめたもの
7.5 演習 電子の流れを押さえて、カルボニル基の反応を理解しよう
□ 質疑応答 □