本書の章立て
「 第1章 ICH M7 Q&A案 – quality partの概説と期待されるリスクコミュニケーション 」
「 第2章 原薬合成における変異原性不純物の管理:パージファクターを用いた変異原性不純物のリスク評価方法 」
「 第3章 推定パージファクターの活用における留意事項 」
「 第4章 ニトロソアミン類のリスク評価と試験法 」
「 第5章 医薬品不純物のリスクアセスメントと関連する最近の事例 」
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各章の紹介 <本文抜粋>
「第1章 ICH M7 Q&A案 – quality partの概説と期待されるリスクコミュニケーション 」
( (独)医薬品医療機器総合機構 福地 準一 / 著)
本稿では、2020年7月から1か月間、意見公募に付されたICH M7 Q&A案について、主としてquality partに関連する質問に関し、ポイントと考えられることを中心に概説する。……(中略)……ICH M7ガイドラインが導入されて以来、変異原性不純物の管理戦略の妥当性を示す上で、推定パージファクターを利用する際、例えば、どのくらいの情報やデータが実際には必要なのかは課題とされ、推定パージファクターに関する留意事項も含め、Q&Aとして明示する期待と需要が高まってきた。これが、Q&A作成の機運を高め、動機付けの要因の一つとなり、パージファクターに関連する事項以外の例えば変異原性評価に関連するQ&Aも含め、ICH M7ガイドライン全体の記載事項を対象にして、規制当局と医薬品業界との間での解釈の違いや規制当局間での対応の違いが生じないよう、Q&Aが作成されることとなり、2018年のICHシャーロット会合にて、Q&Aの議論が開始された。……(本文へ続く)
「第2章 原薬合成における変異原性不純物の管理:
パージファクターを用いた変異原性不純物のリスク評価方法 」
( 富士フイルム(株) 長遠 裕介 / 著)
…
パージファクターを用いた不純物のリスク評価において,はじめに申請時の原薬製造ルートに対して不純物のハザード評価を実施し,管理が必要な変異原性不純物を選定する。次に,各変異原性不純物に対して管理レベルに基づく必要となるパージファクター
(Required purge factor)を算出する。さらに,Teasdale等の手法を用いて予測のパージファクター(
Predicted purge factor)を算出する。最後に,予測のパージファクターと必要とされるパージファクターの比であるパージ比(
Purge Ratio)を算出して,パージ比の大きさに基づいて管理オプションを選定する。……(中略)……得られたパージ比の大きさがオプション4適用において不十分であった場合には,実測のパージファクター等,追加の実験データを取得してオプション4適用の妥当性を再検証する事が可能である。
各パージファクターの算出方法や
管理オプションの選定方法について以下に解説する。……(本文へ続く)
●「予測のパージファクター(Predicted purge factor)」
……予測のパージファクターを決定するにあたり,各
物理化学的パラメータの
スコアリング方法及び
スコアの判定基準を設定する必要がある。
予測のパージファクター算出における各物理化学的パラメータのスコアリング方法の考え方及びスコアの判定基準の例について以下解説する。尚記載したパージファクターのスコアリング方法及びスコアの判定基準については,あくまで著者の見解に基づく提案であり規制当局から承認等が得られたものではない点にご留意頂きたい。……(本文へ続く)
●「サクラミル原薬における変異原性不純物の管理戦略の構築」
……前項まで解説したパージファクターを用いたリスク評価について,実際にサクラミル原薬を事例に用いて変異原性不純物の管理戦略を構築した。尚,本事例はあくまで仮想上のものである事と,内容の理解のためにサクラミル原薬S2モックから変更点等を加えている事に,予めご了承頂きたい。図●にリスク評価の対象となるサクラミル原薬の商業用製造ルートを示す。……(本文へ続く)
「第3章 推定パージファクターの活用における留意事項 」
( 小野薬品工業(株) 田村 慎司 / 著)
●「推定パージファクターのスコアリング」
……本項では、パージファクターを用いた変異原性不純物の残留リスク評価のうち
、特に紙ベースによる推定パージファクターの各物理化学的パラメータのスコアの選択(以下、
スコアリング)に際して、考慮すべき点や議論の発生しやすい点に焦点を当て、筆者の私見を述べる。オプション4の管理戦略やパージファクターを用いた変異原性不純物の残留リスク評価の全体像については、第2章をご参照いただきたい。……(本文へ続く)
……本章では推定パージファクターを用いた変異原性不純物の残留リスク評価のうち、
スコアリングに際して留意すべき点を中心に述べた。リスク評価には絶対的な正解はないと考えられるが、それぞれの計算者が自身の評価を科学的な根拠に基づいて客観性と透明性をもって説明できる必要がある。このため、製造工程の十分な理解と科学に基づきスコアリングを行い、その根拠を明確な記録として残すことが重要である。……(中略)……推定パージファクターを用いたリスク評価に基づくオプション4の管理戦略を積極的に活用することで、残留リスクの高い不純物の管理に高感度分析などのリソースを集中することが可能となり、リスクマネジメントの原則も取り入れた効率的な医薬品開発につながることが期待される。(第3章内「おわりに」より)
「第4章 ニトロソアミン類のリスク評価と試験法 」
( シオノギファーマ(株) 長尾 恭子 /著)
……2018年6月にバルサルタン原薬においてN-ニトロソジメチルアミン(NDMA)が検出されたことを皮切りに、欧州医薬品庁(EMA)、米国食品医薬品局(FDA)は他国の規制当局と共に医薬品へのニトロソアミン類の混入に関する調査を、テトラゾール環を有するサルタン系の原薬に留まらず、他のカテゴリーの医薬品にまで拡大して実施した。その結果、サルタン系の原薬の他にもH2ブロッカーであるラニチジン、ニザチジン、糖尿病治療薬のメトホルミンからもニトロソアミン不純物が検出され、安全性が確保できないと判断された製品については世界的に医薬品の回収が行われた。……(中略)……日本においても今後、
欧米と同様にニトロソアミン不純物の規制は厳格化されることが予想される。本章では、
ニトロソアミン不純物に求められるリスク評価とその試験法について紹介する。 ……(本文へ続く)
「第5章 医薬品不純物のリスクアセスメントと関連する最近の事例」
( (独)医薬品医療機器総合機構 小川 卓巳 /著)
…
リスクアセスメントについてはICH Q9において示されているが、この考え方は昨今の医薬品品質の審査の様々な場面において参考となる内容となっている。リスクアセスメントの流れとしてはリスクを特定し、リスクを分析する、そしてリスク評価するということになり、うまくいかないという事態、即ちリスクを遠ざけるために、評価されるものである。
承認後においては、このリスクアセスメントの作成、見直しが必要になる機会が多く発生し、その結果として、
管理戦略の変更が生じ、
薬事手続きが必要になるケースもある。医薬品不純物でいえば、
混入する不純物は何か、混入源や要因は何か、混入する可能性や程度はどのくらいか、混入したときに、どのようなことが想定されるか等を予め検討することになる。そして、その結果を踏まえて適切な管理戦略の策定(製造管理、品質管理)が行われる。……(中略)……次項では、
不純物のリスクアセスメントに係る事例としておさえてほしいものをいくつか例示する。なお、個々の品目ごとの対応は申請品目の特性に応じて検討するものであり、本稿で述べる内容は適切な対応例ではないケースも想定されることに留意してほしい。……(本文へ続く)