第1章 中分子ペプチド医薬品開発に向けた規制の現状と課題
【出水庸介 国立医薬品食品衛生研究所】
はじめに
1. 中分子ペプチド医薬品と規制科学(Regulatory Science)の必然性
1.1 中分子ペプチド医薬品が注目される背景
1.2 創薬モダリティの多様化と「規制の空白領域」
1.3 規制科学の役割と本稿の目的
2. 中分子ペプチド医薬品の定義と分類をめぐる課題
2.1 分子量・残基数による分類の限界
2.2 製造法による分類とその問題点
2.3 定義の曖昧さが開発に与える影響
3. 中分子ペプチド医薬品の構造的多様化と創薬技術の進展
3.1 古典的ペプチド医薬品の特徴と限界
3.2 非天然アミノ酸導入と分子修飾
4. 市場動向と開発パイプラインの変化
4.1 世界及び国内市場の成長動向
4.2 疾患領域別の開発動向
4.3 開発パイプラインにおける「次世代化」
5. 品質評価の現状と規制上の課題
5.1 中分子ペプチド医薬品における品質評価の基本的考え方
5.2 特性解析の重要性
5.3 ペプチド関連不純物の多様性と管理
6. 非臨床安全性評価の考え方と課題
6.1 中分子ペプチド医薬品における非臨床評価の位置づけ
6.2 遺伝毒性試験の要否をめぐる議論
6.3 免疫原性評価の重要性
7. 海外における規制動向の詳細比較
7.1 米国FDA におけるペプチド医薬品の取扱い
7.2 欧州EMA のコンセプトペーパーからガイドラインへ
7.3 USP <1503> とEP モノグラフの位置づけ
8. 産業界から見た規制上の課題
9. 規制科学の観点からの提言と将来展望
第2章 生理活性ペプチドの体内動態とDDS 開発
【勝見英正 昭和医科大学大学院薬学研究科】
はじめに
1. 経口投与後の生理活性ペプチドの吸収性とその吸収改善
2. 直腸内投与後の生理活性ペプチドの吸収性と製剤開発
3. 経皮投与後の生理活性ペプチドの吸収性と経皮吸収型DDS の開発
4. 生理活性ペプチドの経肺吸収性とDDS 開発
5. 経鼻投与後の生理活性ペプチドの脳移行性
6. 注射後の生理活性ペプチドの体内動態とDDS 開発
おわりに
第3章 ペプチド医薬品の化学合成
【西内祐二 (株)糖鎖工学研究所/東北大学大学院理学系研究科】
はじめに
1. 治療薬候補としての生理活性ペプチド
2. ペプチド化学合成
2.1 ペプチド化学合成の概要
2.2 ペプチド化学合成とサステナビリティ
2.2.1 CSPS の特性
2.2.2 SPPS の特性
2.2.3 LPPS の特性
2.3 コンバージェント法
2.3.1 保護ペプチドのセグメント縮合
2.3.2 遊離ペプチドのセグメント縮合(ライゲーション)
2.3.3 コンバージェント法によるGLP-1アナログ医薬品の合成
3. ペプチド合成に伴う副反応
3.1 ペプチド鎖伸長時に伴うアミノ酸のエピ化
3.1.1 システインのエピ化
3.1.2 ヒスチジンのエピ化
3.2 アスパルチミド(Asi)形成とアスパラギン酸のエピ化
3.3 欠損/短鎖ペプチド
3.4 アミノ官能基のグアニジン化
3.5 最終TFA 処理に伴う副反応
3.5.1 アルキル化
3.5.2 セリン/スレオニンのN → Oアシル転位
3.5.3 その他の副反応
3.6 ペプチドの精製中及び保存時の副反応
おわりに
第4章 中分子創薬におけるプロセス化学
【岩村寛 中外製薬(株)】
1. ペプチド医薬品に関する概要と本稿の目的
1.1 ペプチド医薬品の臨床的意義
1.2 ペプチド創薬プラットフォーム技術の進展
1.3 構造の複雑化に伴う「次世代型」ペプチド原薬の合成難度の増大
1.4 ペプチド医薬品開発における動向
1.4.1 品質・安全性に関する規制
1.4.2 高品質・安定供給に向けた業界の取組み
1.4.3 Regulatory Starting Materia(l RSM, 原薬出発物質)の設定戦略
1.5 本稿の目的
2. ペプチド原薬のQbD 開発に関する考察
2.1 QbD の概念
2.2 QbD 開発の実践的な取組み
3. 環状ペプチド原薬のQbD 開発の実例
3.1 プロセス研究開発:新規の温和なt - Bu 脱保護条件
3.2 プロセス最適化:潜在的に重要な要因の特定
3.3 プロセス特性解析:CPP の特定と管理戦略の立案
3.3.1 Impact Ratio(ImpR, インパクト比)の導入
3.3.1.1 ImpR の定義と算出
3.3.1.2 ImpR に基づくCPP 判定基準
3.3.2 t - Bu 脱保護工程のプロセス特性解析
3.3.2.1 実験デザイン
3.3.2.2 結果と考察
3.3.3 管理戦略
4. ペプチド原薬Process Characterization(プロセス特性解析)の効率化に関する考察
4.1 プロセス特性解析の効率化
4.2 不純物管理の課題
5. ペプチド原薬のRSM の設定に関する科学的妥当性の検討
5.1 先駆的な研究事例
5.2 ICH Q11に基づくRSM 設定の要件
5.3 ペプチド中間体を出発物質とする未来展望
5.3.1 非天然アミノ酸品質リスクの低減とサプライヤー管理
5.3.2 現行プロセスの成果:LUNA18における高度な工程管理能力の実証
5.3.3 未来展望:単離精製の導入によるRSM 設定の実現
6. 今後の挑戦
第5章 ペプチドの連続フロー合成
【布施新一郎 東海国立大学機構名古屋大学大学院創薬科学研究科】
はじめに
1. 固相上での連続フロー合成法によるペプチド鎖伸長
1.1 連続フロー合成の自動化
1.2 凝集を起こしやすいペプチドの連続フロー合成
1.3 ペプチド鎖伸長中にアミノ酸の脱落が起きやすい高難度ペプチドの連続フロー合成
1.4 ペプチドの連続フロー合成のスケールアップ
1.5 DMF の代替溶媒としてプロピレンカーボネートを用いたペプチドの連続フロー合成
2. 液相中での連続フロー合成法によるペプチド鎖伸長
2.1 ワンフロー三成分連結法による迅速ペプチド鎖伸長法
2.2 混合炭酸無水物を経る液相連続フローペプチド合成
2.3 ジケトピペラジン生成を回避した液相連続フローペプトイド鎖伸長
3. 連続フローペプチド環化
3.1 連続フローマクロラクタム化及びマクロラクトン化による環状ヘキサデプシペプチドの合成
3.2 連続フロー型マクロラクタム化による高難度環状テトラペプチド及びペンタペプチド合成
3.3 ペプチド環化条件の最適化
4. 大スケールでの連続フロー合成法によるペプチドの連結
おわりに
第6章 ペプチド医薬品原薬における不純物管理と品質確保
【海野淳奈 垣屋澄志 ペプチスター(株)】
はじめに
1. 一般的なペプチド製造
1.1 合成工程
1.2 切り出し工程
1.3 精製工程
1.4 塩交換工程(カラム濃縮工程)
1.5 凍結乾燥工程
2. ペプチド原薬の品質確保に向けた分析法
2.1 ペプチドを取り巻く規制要件の現状
2.2 分析法の設定とバリデーション
2.3 ペプチド原薬の分析法の設定例
おわりに
第7章 ペプチド医薬品原薬の品質評価
【橋井則貴 石井明子 国立医薬品食品衛生研究所】
はじめに
1. ペプチド医薬品の構造的特徴
1.1 ペプチドとタンパク質の規制上の区別
1.2 ペプチドの分類
1.2.1 天然型ペプチド
1.2.2 非天然型アミノ酸含有ペプチド
1.2.3 環状ペプチド
1.2.4 修飾ペプチド
2. ペプチド医薬品に関する規制文書
2.1 化学合成ペプチド医薬品に関連する規制文書
2.2 遺伝子組換えペプチド医薬品に関連する規制文書
3. ペプチド医薬品原薬の特性解析
3.1 特性解析の基本的考え方
3.2 構造解析
3.2.1 アミノ酸組成
3.2.2 アミノ酸配列
3.2.3 分子量
3.2.4 ジスルフィド結合解析
3.2.5 分光学的性質
3.2.6 対イオン
3.3 物理化学的性質解析
3.3.1 性状、結晶構造・結晶形、溶解性及び吸湿性
3.3.2 pH、等電点及び電荷バリアント
3.3.3 熱分析
3.4 生物活性
3.4.1 標的分子との結合性及び細胞応答性の評価
3.4.2 修飾ペプチドにおけるタンパク質結合性評価
3.5 不純物解析
3.5.1 修飾体
3.5.2 立体異性体
3.5.3 凝集体
3.5.4 有機不純物、無機不純物及び残留溶媒
3.5.5 宿主細胞由来タンパク質及び宿主細胞由来DNA
3.6 その他
4. ペプチド医薬品原薬の規格及び試験方法
4.1 規格及び試験方法設定の基本的考え方
4.1.1 性状及び確認試験
4.1.2 示性値
4.1.3 純度試験
4.1.4 生物活性
4.2 規格及び試験方法のライフサイクル管理
5. ペプチド医薬品原薬の品質管理戦略
おわりに
第8章 化学合成ペプチド医薬品の品質評価と製造・製剤工程の影響
【伊豆津健一 国際医療福祉大学】
はじめに
1. ペプチド医薬品の製剤と品質課題
1.1 化学的安定性と物理的不安定性の関係
1.2 ペプチドの構造特性と分子間相互作用
1.3 溶解性と製剤中濃度
1.4 凝集、ゲル化及びアミロイド様繊維形成
1.5 界面吸着と工程内損失
2. 製剤品質への原薬の影響
3. 添加剤の選択と処方スクリーニング
4. 剤形及び製剤工程別の留意点
4.1 溶液製剤
4.2 凍結乾燥製剤
4.3 懸濁製剤及びデポ製剤における徐放化
4.4 プレフィルドシリンジ及び投与デバイス
4.5 注射以外の投与経路による製剤化
5. ペプチド製剤の安定性評価と品質管理戦略
5.1 安定性予測と保存温度
5.2 安定性評価に用いる分析法
5.3 製剤の特性評価とCQA の設定
6. ペプチド原薬の凍結乾燥
6.1 原薬の最終工程としての凍結乾燥
6.2 製剤工程からみた乾燥工程の最適化
まとめ
第9章 ペプチド医薬品製剤開発における不純物管理と品質評価・品質管理
【野田勝紀 (株)ユー・メディコ】
はじめに
1. ペプチド医薬品の品質評価における基本的な考え方
1.1 ペプチドに対する規制上の位置づけ
1.2 重要品質特性(CQA)としての不純物プロファイル
2. ペプチド医薬品に特徴的な不純物
2.1 合成・製造工程由来のペプチド関連不純物
2.2 保存中に生じる分解生成物
2.3 会合体・凝集体
2.4 その他の不純物
3. GLP-1 関連製剤にみる品質上の特徴
3.1 リラグルチド
3.2 セマグルチド
3.3 チルゼパチド
4. 不純物評価のための分析戦略
4.1 RP-HPLC/UPLC を中心とした関連物質試験
4.2 有効成分の同一性及び構造特性の確認
4.3 LC-MS 及びLC-MS/MS
4.4 SEC、SV-AUC、IEX/HIC などの直交的分析法(orthogonal methods)
4.5 分析法を組み合わせた不純物同定の具体例
4.6 安定性を適切に評価できる分析法の確立
5. 製剤開発における安定性と不純物の制御
5.1 pH と緩衝液
5.2 界面、吸着、振とう及び凍結融解
5.3 防腐剤などの保存剤を含む多回投与製剤
5.4 容器・デバイスとの適合性
6. 規格設定と品質管理戦略
6.1 開発段階の不純物管理
6.2 特定不純物、未特定不純物及び総不純物
6.3 分析法バリデーションとライフサイクル
6.4 物理化学的品質特性と生物活性
6.5 不純物の安全性確認と免疫原性の考え方
7. 今後の課題
おわりに
第10章 ペプチド医薬品原薬製造におけるスケールアップ時の留意点
【久保大輔】
はじめに
1. ペプチド原薬製造における品質管理
1.1 ペプチド原薬の品質確保戦略
1.2 合成工程におけるCMA 及びCPP
1.3 合成工程におけるIPC
2. スケールアップ時の技術的留意点
2.1 プロセス開発における評価因子と評価指標
2.2 ペプチド合成プロセスの特徴
2.3 合成手法の選択
2.4 固相合成によるスケールアップ
2.5 タグ液相法によるスケールアップ
2.6 縮合剤の選択
2.7 溶媒の選択
2.8 アミノ酸試薬の選択
3. ペプチド合成で発生する不純物
3.1 過伸長体
3.2 欠損体
3.3 立体異性体
3.4 アスパルチミド
3.5 全脱保護工程で発生する不純物
まとめ