【特徴】
1.収録添加剤の分類、コードNoは赤外吸収スペクトル集と同一にし、赤外スペクトル集と併用利用し易い形式、構成にしてある。
異物や表面欠陥等については先ず(顕微)赤外分光で分析し、解決できない場合にMS分析すると有効で、問題がほぼ解決できる。もちろん本書だけでも有効に利用できるが、両方を併用して利用し易いように同じ構成にし、化合物の分類コードNoを同一にしてある。
2.添加剤500点、新規入手添加剤26点、有機顔料40点、ワックス等約600点収録。
赤外吸収スペクトル集と同じ添加剤500点及びIRスペクトル集発刊後の新規入手添加剤26点、有機顔料40点、無機顔料34点、ワックス8点の赤外吸収スペクトル集に未掲載の化合物も加えて約600点のマススペクトルが収録してある。特に、有機顔料はマス分析では分子イオンが検出され易く、高感度であるため、材料の着色問題等には有用性が高い。
収録対象(サンプル数)
A 酸化防止剤(75) | G 滑剤(49) | N 電気特性向上剤(3) | T ワックス(8) |
B 紫外線吸収剤(58) | H 可塑剤(77) | O 造核剤(16) | U 有機顔料(40) |
C 金属不活性剤(4) | I 帯電防止剤(25) | P 光学特性制御剤(4) | V 無機顔料(24) |
D 安定剤(44) | J 防曇剤(7) | Q 抗菌剤(8) | W その他顔料(10) |
E 難燃化安定剤(3) | K 難燃剤(59) | R 改質剤(7) | |
F 加水分解抑制剤(1) | M 充填剤(51) | S 新規入手添加剤(26) | (合計 599点) |
3.マススペクトルはDEP法でマスレンジは40~650で測定。サーモグラムも併せて掲載。
マススペクトルはDEP-EI法により10℃/secで1000℃まで昇温測定し、マスレンジ範囲はm/z=40~650である。GC-MSではガス化困難な高沸点化合物、高分子タイプの添加剤も測定できるので収録してある。サーモグラムも併せて掲載してあるので、化合物の概略のガス化温度が解ると共に、添加剤が2成分以上の混合物かあるいは1成分かが判別できる。
4.化合物名索引、商品名索引に加え、特徴フラグメント(分子イオン)索引も掲載。
化合物名索引はデータ集掲載の全添加剤が音順に記載してあるので、化合名が既知の場合索引から利用できる。現場では商品名で呼称される場合が多いので、解る範囲の全ての商品について音順で記載した。また、MS分析の初心者にとってはマススペクトルの解析がネックであるが、解析の糸口となる化合物の特徴フラグメントに着目し、特徴フラグメント(化合物によっては分子イオン)の索引を質量順に掲載した。これを活用することにより、初心者や慣れない人でも解析をスムースに進めることが可能で、本書の特徴ともなっている。
【本書利用法の紹介】
本書はマススペクトルデータに、化合物の説明とサーモグラムを加えたデータ集として構成されている。測定はDEPを用いて10℃/secで1000℃まで昇温し、EI法(Electron Beam)でイオン化し、四重極検出器でマススペクトルを得たもので、難揮発性の添加剤やポリマータイプの添加剤も前処理なしでデータが得られる。以下データ例を用いて利用法を紹介する。
1.試料明細
上段左枠は試料の明細である。最初はコードNoで、赤外吸収スペクトル集と同じコードNoが付してある。その右が万国共通のCAS Noで、次段が通称(一般名)である。化学名では長くなるので、通称(一般名)で呼称されることが多い。その下段に正式な化学名、その次に分子式(化学示性式)で、最下段が商品例である。商品が多く枠内に入らない場合もあるので、本書最後に商品名検索を入れた。
2.サーモグラム
上段右枠はDEP測定時のサーモグラムである。縦軸はトータルイオン強度、横軸は時間(min.)である。ピーク温度は10℃×(60×時間(min.)-10)×0.9で計算でき、概略のガス化温度がわかる。ピークが複数個の場合には各ピークのマススペクトルを分けて示した。
3.マススペクトル
最下段がマススペクトルであり、最も強いフラグメントを100に規格化して表示されている。マスレンジはm/z=40~650である。データ例A1(030)のマススペクトルの特徴フラグメントはm/z=221.18であり、分子イオンはm/z=236.21である。本書の特徴として最後に特徴フラグメント(分子イオン)索引を添付した。MS分析ではいつも分子イオンが強く検出されるとは限らない。特徴フラグメントは分析の初心者や慣れない人がマススペクトルを解析するときに非常に便利であり、m/z=221.18の質量で索引すれば、A1(030)にヒットする。サーモグラムでピークが複数個の場合もある。その時は各ピークのマススペクトルを複数個に分けて表示してある。各ピークのマススペクトルが違う場合は添加剤が複合物であり、同じ場合には分子の会合等が起こっていることが本データ集から識別できる。
例: 酸化防止剤:A(1)030